< マルコの福音書 13 >
1 第三項 エルサレムの滅亡等の預言 イエズス[神]殿を出で給ふに、弟子の一人、師よ、視給へ、此石は如何に、此構造は如何に、と云ひしかば、
2 イエズス答へて曰ひけるは、此一切の大建築を見るか、一の石も崩れずして石の上に遺されじ、と。
3 イエズス橄欖山に於て、[神]殿に向ひて坐し給へるに、ペトロヤコボヨハネアンデリア特に是に問ひけるは、
4 此事等は何時あるべきぞ。而して事の皆果され始めん時に、如何なる兆あるべきぞ、我等に告げ給へ、と。
5 イエズス答へて彼等に曰ひけるは、汝等人に惑はされじと注意せよ。
6 其は多くの人我名を冒し來りて、我はキリストなりと云ひて、多くの人を惑はすべければなり。
7 汝等戰争及戰争の噂を聞きて懼るる勿れ、此事等は蓋有るべし、然れど終は未至らざるなり。
8 即民は民に、國は國に起逆ひ、地震飢饉處々にあらん、是等は苦の始なり。
9 汝等自省みよ、蓋人々汝等を衆議所に付し、汝等は諸會堂にて鞭たれ、我為に證據として、総督と王侯との前に立たんとす。
10 然て福音は先萬民に宣傳へられるべし。
11 人々汝等を引きて付さん時、何を云はんかと預案ずること勿れ、唯其時汝等に賜はらん事を云へ、其は言ふ者は汝等に非ずして聖霊なればなり。
12 兄弟は兄弟を、父は子を死に付し、子等は兩親に立逆ひ、且之を殺さん。
13 汝等我名の為に凡ての人に憎まれん。然れど終まで耐忍ぶ人は救はるべし。
14 汝等「最憎むべき荒廃」の、立つべからざる處に厳然たるを見ば、読む人は悟るべし。其の時ユデアに居る人々は山に遁るべし、
15 屋の上に居る人は家の内に下り、家より何物をか取出さんとて内に入るべからず。
16 畑に居る人は其上衣を取らんとて歸るべからず。
17 其日に當りて懐胎せる人、乳を哺する人は禍なる哉。
18 此事の冬に起らざらん事を祈れ。
19 其は其日に際して、神が[萬物を]創造し給ひし開闢の始より今に至るまで曾て有らず、後にも復有らざらん程の難あるべければなり。
20 主若其日を縮め給はずは、救はるる人なからん。然れど特に選み給ひし、選まれたる人々の為に、其日を縮め給へり。
21 其時汝等に向ひて、看よキリスト此處に在り、看よ彼處に在り、と云ふ者ありとも之を信ずること勿れ。
22 其は僞キリスト、僞預言者等起りて、能ふべくば、選まれたる人々をさへ惑はさんとて、大いなる徴と不思議なる業とを為すべければなり。
23 然れば汝等省みよ。我預め一切を汝等に告げたるぞ。
24 其時、斯る患難の後、日晦み、月其光を與へず、
25 空の星隕ち、天に於る能力動揺せん、
26 其時人々は、人の子が大いなる権力と榮光とを以て、雲に乗り來るを見ん。
27 時に彼其使等を遣はし、地の極より天の極まで、四方より其選まれたる人を蒐集めしめん。
28 汝等無花果樹より喩を學べ、其枝既に柔ぎて葉を生ずれば、夏の近きを知る。
29 斯の如く、此事等の成るを見ば、汝等亦其近くして門に至れるを知れ。
30 我誠に汝等に告ぐ、此事等の皆成るまでは現代は過ぎざらん。
31 天地は過ぎん、然れど我言は過ぎざるべし。
32 其日其時をば、天に於る天使等も、子も、何人も知らず、唯父のみ[之を知り給ふ]。
33 汝等注意し、警戒し、且祈祷せよ、蓋期の何時なるかを知らざればなり。
34 其は恰も人、其家を去りて遠方に旅立つに當り、僕等に命じて、各其務を頒ち充て、門番には警戒する事を命じたるが如し。
35 然れば汝等警戒せよ、家の主の來るは何時なるべきか、夕暮なるか夜半なるか、将鷄鳴く頃なるか朝なるか、之を知らざればなり。
36 恐くは、彼遽に來りて汝等の寝ねたるを見ん。
37 我汝等に云ふ所を凡ての人に云ふ、警戒せよ[、と曰へり]。