< コリント人への手紙第二 11 >
1 第二項 パウロ己を僞教師に比較す 冀はくは汝等我が愚なる所を聊容赦せん事を、又我をも容赦せよ。
2 其は我神の如き妬を以て汝等の為に奮發し、汝等を一人の夫に於る潔白なる少女としてキリストに婚約したればなり。
3 然れど我が恐るる所は、蛇の狡猾によりてエワの惑はされし如く、汝等の心損はれてキリストに對する質朴を失はん事是なり。
4 蓋人來りて、我等の宣べざりし他のキリストを宣べ、又は汝等曾て蒙らざりし他の霊、若くは曾て承容れざりし他の福音を受けんか、汝等能く之を容れん。
5 然れど我は何事に於ても彼大使徒等に劣らずと思ふ、
6 蓋談話には拙けれども學識は然らず、然れど萬事に於て汝等には顕然たり。
7 或は我、汝等を高めん為に自ら謙りて、報酬なくして神の福音を宣べたるが犯罪なりや、
8 我他の教會を剥取りて給金を受け、以て汝等の為に務め、
9 又汝等の中に在りて乏しかりしも誰をも煩はさず、マケドニアより來りし兄弟等は我が足らざるを補へり、斯の如く自ら注意して、萬事に於て汝等を煩はさじとしたるが、以後も亦注意せんとす。
10 我に在るキリストの眞理によりて誓ふ、此名誉はアカヤ地方に於て我に就きて毀はれざるべし、
11 是何故ぞ、我が汝等を愛せざる故なるか、神は知り給へり。
12 我が行ふ所は我尚之を行はんとす、是機會を求むる人々の機會を断ち、彼等をして自ら誇る所に就きて我等と同じからしめん為なり。
13 蓋斯る人々は僞使徒にして狡猾なる勞働者、身をキリストの使徒に装へる者なり。
14 是は珍しき事に非ず、サタンすら自ら光の使に己を装ふ者なれば、
15 其役者が亦義の役者の如く装ふは大事に非ず、彼等の終は其業に適ふべし。
16 我再び言はん、我も少しく誇るべければ、誰も我を愚なりとする事勿れ、然らずば愚として我を承容れよ。
17 此名誉の點に就きて我が語る所は、主に從ひて語るに非ず、愚なる者の如くにして語るなり。
18 多くの人は肉身上に誇る故に、我も亦誇らん。
19 蓋汝等は自ら智者なれば、喜びて愚者を忍ぶなり。
20 即ち人ありて汝等を奴隷とするも、喰盡すも、掠むるも、驕るも、汝等の面を打つも、汝等は之を忍ぶ。
21 耻しながら我は言ふ、我等は此點に就きて弱き者の如くなりき。愚にも言はん、人の敢て憶せざる所は我もあえて憶せず。
22 彼等ヘブレオ人なるか、我も亦然り、彼等イスラエル人なるか、我も亦然り、彼等アブラハムの裔なるか、我も亦然り、
23 彼等キリストの役者なるか、我狂へるが如くに云はん、我は尚然り。我働は尚夥しく、監獄に入りし事は尚多く、傷けられし事は無量にして、死に遇へる事は屡なりき。
24 ユデア人より四十に一足らず打擲せられし事五度、
25 笞刑を受けし事三度、石を擲たれし事一度、破船に遇ひし事三度にして、一晝夜の間海中に在りき。
26 數次旅行して、河の難、盗賊の難、邦人よりの難、異邦人よりの難、都會に於る難、僻地に於る難、海上の難、僞兄弟よりの難に遇ひ、
27 勞働し且悩み、數次夜眠らず、飢渇き、断食する事度々にして凍え且裸なりき。
28 是等外部の事の外、亦日々差迫れる諸教會の憂あり、
29 弱れる者あるに我も弱らざらんや、躓く者あるに我も心燬けざらんや。
30 誇るべくんば我が弱點に就きて誇らん、
31 世々に祝せられ給ふ我主イエズス、キリストの神及び父は、我が僞らざる事を知り給ふ。 (aiōn )
32 ダマスコに於てアレタ王の下なる州長、我を捕へんとてダマスコ人の都會を守りしかば、
33 我は籠を以て窓より石垣傳ひに釣下され、然て其手を脱れたりき。