< ヨブ 記 38 >
「無知の言葉をもって、神の計りごとを暗くするこの者はだれか。
3 なんぢ腰ひきからげて丈夫のごとくせよ 我なんぢに問ん 汝われに答へよ
あなたは腰に帯して、男らしくせよ。わたしはあなたに尋ねる、わたしに答えよ。
4 地の基を我が置たりし時なんぢは何處にありしや 汝もし穎悟あらば言へ
わたしが地の基をすえた時、どこにいたか。もしあなたが知っているなら言え。
5 なんぢ若知んには誰が度量を定めたりしや 誰が準繩を地の上に張りたりしや
あなたがもし知っているなら、だれがその度量を定めたか。だれが測りなわを地の上に張ったか。
6 その基は何の上に奠れたりしや その隅石は誰が置たりしや
その土台は何の上に置かれたか。その隅の石はだれがすえたか。
7 かの時には晨星あひともに歌ひ 神の子等みな歡びて呼はりぬ
かの時には明けの星は相共に歌い、神の子たちはみな喜び呼ばわった。
8 海の水ながれ出で 胎内より涌いでし時誰が戸をもて之を閉こめたりしや
海の水が流れいで、胎内からわき出たとき、だれが戸をもって、これを閉じこめたか。
9 かの時我雲をもて之が衣服となし 黑暗をもて之が襁褓となし
あの時、わたしは雲をもって衣とし、黒雲をもってむつきとし、
11 曰く此までは來るべし此を越べからず 汝の高浪ここに止まるべしと
言った、『ここまで来てもよい、越えてはならぬ、おまえの高波はここにとどまるのだ』と。
12 なんぢ生れし日より以來朝にむかひて命を下せし事ありや また黎明にその所を知しめ
あなたは生れた日からこのかた朝に命じ、夜明けにその所を知らせ、
13 これをして地の縁を取へて惡き者をその上より振落さしめたりしや
これに地の縁をとらえさせ、悪人をその上から振り落させたことがあるか。
14 地は變りて土に印したるごとくに成り 諸の物は美はしき衣服のごとくに顯る
地は印せられた土のように変り、衣のようにいろどられる。
15 また惡人はその光明を奪はれ 高く擧たる手は折らる
悪人はその光を奪われ、その高くあげた腕は折られる。
16 なんぢ海の泉源にいたりしことありや 淵の底を歩みしことありや
あなたは海の源に行ったことがあるか。淵の底を歩いたことがあるか。
17 死の門なんぢのために開けたりしや 汝死蔭の門を見たりしや
死の門はあなたのために開かれたか。あなたは暗黒の門を見たことがあるか。
18 なんぢ地の廣を看きはめしや 若これを盡く知ば言へ
あなたは地の広さを見きわめたか。もしこれをことごとく知っているならば言え。
19 光明の在る所に往く路は孰ぞや 黑暗の在る所は何處ぞや
光のある所に至る道はいずれか。暗やみのある所はどこか。
20 なんぢ之をその境に導びき得るや その家の路を知をるや
あなたはこれをその境に導くことができるか。その家路を知っているか。
21 なんぢ之を知ならん汝はかの時すでに生れをり また汝の經たる日の數も多ければなり
あなたは知っているだろう、あなたはかの時すでに生れており、またあなたの日数も多いのだから。
あなたは雪の倉にはいったことがあるか。ひょうの倉を見たことがあるか。
23 これ我が艱難の時にために蓄はへ 戰爭および戰鬪の日のために蓄はへ置くものなり
これらは悩みの時のため、いくさと戦いの日のため、わたしがたくわえて置いたものだ。
24 光明の發散る道 東風の地に吹わたる所の路は何處ぞや
光の広がる道はどこか。東風の地に吹き渡る道はどこか。
25 誰が大雨を灌ぐ水路を開き雷電の光の過る道を開き
だれが大雨のために水路を切り開き、いかずちの光のために道を開き、
27 荒かつ廢れたる處々を潤ほし かつ若菜蔬を生出しむるや
荒れすたれた地をあき足らせ、これに若草をはえさせるか。
29 氷は誰が胎より出るや 空の霜は誰が產むところなるや
氷はだれの胎から出たか。空の霜はだれが生んだか。
31 なんぢ昴宿の鏈索を結びうるや 參宿の繋繩を解うるや
あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか。オリオンの綱を解くことができるか。
32 なんぢ十二宮をその時にしたがひて引いだし得るや また北斗とその子星を導びき得るや
あなたは十二宮をその時にしたがって引き出すことができるか。北斗とその子星を導くことができるか。
33 なんぢ天の常經を知るや 天をして其權力を地に施こさしむるや
あなたは天の法則を知っているか、そのおきてを地に施すことができるか。
34 なんぢ聲を雲に擧げ滂沛の水をして汝を掩はしむるを得るや
あなたは声を雲にあげ、多くの水にあなたをおおわせることができるか。
35 なんぢ閃電を遣はして往しめ なんぢに答へて我儕は此にありと言しめ得るや
あなたはいなずまをつかわして行かせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言わせることができるか。
36 胸の中の智慧は誰が與へし者ぞ 心の内の聰明は誰が授けし者ぞ
雲に知恵を置き、霧に悟りを与えたのはだれか。
37 たれか能く智慧をもて雲を數へんや たれか能く天の瓶を傾むけ
だれが知恵をもって雲を数えることができるか。だれが天の皮袋を傾けて、
38 塵をして一塊に流れあはしめ土塊をしてあひかたまらしめんや
ちりを一つに流れ合させ、土くれを固まらせることができるか。
39 なんぢ牝獅子のために食物を獵や また小獅子の食氣を滿すや
あなたはししのために食物を狩り、子じしの食欲を満たすことができるか。
40 その洞穴に伏し 森の中に隱れ伺がふ時なんぢこの事を爲うるや
彼らがほら穴に伏し、林のなかに待ち伏せする時、あなたはこの事をなすことができるか。
41 また鴉の子 神にむかひて呼はり 食物なくして徘徊る時 鴉に餌を與ふる者は誰ぞや
からすの子が神に向かって呼ばわり、食物がなくて、さまようとき、からすにえさを与える者はだれか。